絵本 日本女性史〈1〉原始・古代・中世

縄文時代から室町時代の、様々な立場で生きた女性たちが活写されています。女性が置かれた状況がどのように変化してきたかも知ることができます。女性と男性。この２つの性があって、遠く１万年の古代から人間社会は成り立ってきたんだなぁ、ということを実感することもできます。文章は読みやすく、美しい絵にも助けられ、歴史を知らない私でもその場にいるような臨場感を持って１万年前から14世紀までを旅することができました。現代日本のこの社会は、突然、こうなったわけではない。現在は過去とつながり、現在もまた未来の根っこになるんだよ、と著者の野村育世先生（美術大学の付属の中学高校で歴史を教えていらっしゃるそうで、こんな先生に歴史を教わる生徒さんたちがうらやましい!!）がおっしゃっているような気もしました。また、この本を読んで、私は縄文時代、ドングリを拾っていたし、平安時代、御簾の中でハンサムな坊さんの説教をうっとり聞いたし、激しい戦乱の時代には、自らの政治的センスを活かし一族の者を守ったのだ、と感じることができました。この本に描かれた過去の女性たちを生きるうちに、21世紀を生きる私自身もやがては未来を生きる女性たちとともにあるのだ、と考えていました。過去や未来を分断して生きるのは辛い。この本を読んで生まれたこのアイディアには心安らぐものがあります。通史の効用というか、歴史を学ぶおもしろさは、こうした大きな時間のうねりの中に自分を投入する、というところにもあるんですかね。「絵本日本女性史」という全４巻の１巻目だそうで、今後の展開も楽しみです。子ども向けの本だと思いますが。歴史に興味はあるけれど今さら勉強できないし、と悩む大人（私のような）の最良のガイドブックになる一冊だと思いました。