退職代行 (SB新書)

筆者の小澤亜季子さんは、弁護士で社会保険労務士も登録している方です。2018年から退職代行サービスを開始しており、マスコミからも注目されている方でした。4pに紹介されているように民法627条第1項には「雇用は、解約の申入れの日から2週間を経過することによって終了する」と明記されています。「労働契約は終了」し「会社の承諾は必要」ないわけですが、それでもこのような退職代行のサービスが成り立つのは、法律違反を犯しながらも、ひとえにやめさせてもらえない事業所が多く存在することに他なりません。人手不足だけでない雇用の闇が伝わってきました。「非弁業者」が存在しているのも知っていますが、8pに書かれているように、「退職時にしばしば起きる問題の解決」について「弁護士以外の者が交渉を行うことは、弁護士法で禁じられて」いるわけで、ここで書かれているように弁護士がすべき仕事でしょう。雇用者側も弁護士が登場するだけ見構えますし、トラブルの交渉時に法律家の担保があれば、解決に向かいます。「退職代行サービス」については38p以降に具体的な流れが書かれていますが、依頼方法はごく普通です。基本料金も弁護士が介在すると考えればさほど高くありません。本来は費用が発生するものではないのですが、それでもニーズがあるほど日本の企業は病んでいるわけです。64pにあるように「ブラック企業は淘汰」されるべきですし、こんなことをしていたら、従業員の確保が難しくなり、早晩立ち行かなくなります。その後に勤務先が弁護士を立てて損害賠償請求をしてきたケースがあることすら驚きです。46pに業務上の迷惑での損害賠償のケースが示されていますが、そもそもこれでは勝ち目がありませんし、和解での解決は当然です。もし裁判になれば、会社のブラックな状況を世間に公表するわけですから。それよりも「辞めたくても辞められない真面目な人々(20p)」が存在することの方が問題でしょう。若者だけが使うサービスではないのも理解しました。本書に具体例が数多く示されていますが、それにしてもブラックな企業が多いですね。驚きました。パワハラの横行ぶりには開いた口がふさがりません。刑事上の責任を負うべき問題も散見しました。そんな日本企業の悪い面をまた学んだ気がしています。