Newsweek (ニューズウィーク日本版) 2015年 8/25 号 [温暖化 想定外の未来]

・特集：「温暖化」温室効果ガスの排出量削減など環境問題の様々な論点。異常気象や海面上昇をもたらすとされる地球温暖化の懸念、これを受けて地球の温暖化を産業革命前と比べて2度以下に抑えるという目標が09年の国連会議で採択され、今年12月にはパリでCOP21が開かれる予定。これまでは2度までの気温上昇であれば比較的安全という共通認識 / 前提があった、しかし最新の論文では2度の上昇は危険な値であるとしていて議論への影響も考えられる。温暖化にまつわる人々の意識、安全保障上のリスク、生態系への影響、中国やインドなど産業発展著しく自動車が急速に普及している国の大気汚染。最後の記事は環境問題について鋭く指摘する。それはかつて先進国で盛んであったいくつかの産業がコストが安い国にアウトソーシングされているが、コストが安いということは (環境保護にかかるコストも安い ＝ 環境基準が緩い) という側面もあり、そうした仕組みを通じてモノを購入したり販売している先進国は新興国の大気汚染を間接的に生み出しているという。地球の環境問題は皆が当事者。・中国の人民元切り下げは世界に動揺を与えた。同国の株価下落や輸出額の落ち込みを経たタイミングでの決定は様々な憶測を呼んでいる、IMFのように通貨価値を市場原理に委ねようとする動きとみなし評価する向きがある一方で、市場参加者の自由と権利、情報が制限された状況では正しい価格決定メカニズムは働かないとする見方もある。別記事では天津爆発事故について。・安倍談話と戦後の脱却。国際情勢認識については「マスコミなどがつくり出した虚像を基にして議論を組み立てがちで、現実性や実現性に乏しく、時には有害なものとなる」「好き嫌いから離れてしっかり見つめる必要がある。」とし、中韓との関係は「日中関係は政治的に利用されており、道義的な議論では解決しない。」「無理に中韓との「和解」を求めるより、競争しながらも相戦わないという「共存」の関係を求めていくだけで十分だろう。」と結論づける。加えて国際社会においては自らの貢献を主張したりその立場を広くアナウンスするなど能動的発信の必要性を感じさせる記事。・米大統領選。カーリー・フィオリーナ氏は民主党クリントン候補に立ち向かえる共和党唯一の女性候補と目されていたが、今や党内の「打倒トランプ」対抗力として期待がかかる。先日行われた第一回共和党候補者討論会では直近の支持率上位10位以内で構成される2部には食い込めなかったものの1部でトランプ氏の問題発言を痛烈批判、討論会直後の世論調査で支持率を伸ばした。一方クリントン氏はメール問題においてメールサーバーとUSBメモリを司法省に提出するなど捜査に協力姿勢をみせ方針転換する。・EDUCATION/道徳ゲームで子供達の社会性を育む試み。昔と違ってゲームで扱える情報量は膨大なものとなっているので、こうしたロールプレイングゲームもより迫真なものとなっていそうで面白そう。バーチャルであっても何か生き物を育てたり他人とやり取りすることで得られるもたらされるものというのは、単なるゲームスコアに留まらないものだと思う。・PRODUCTS/香りの研究。化学者が開発した「香りの記憶キット」の使い方は意外なものだった、視覚による記憶と比べて嗅覚の記憶は遥かに強力だという。嗅覚というのは生存に大きく関わる能力のため強力に発達していて、ほかの感覚もそれに大きく依存するというような話をどこかで聞いた覚えがある。化学者は匂いに名前をつけているらしい。今回は紛争などの血なまぐさい記事は少なく様々な話題や文化が取り上げられている。もはやお家芸か、Offbeat/中国の怪しい五輪招致ソングの記事はユーモアと皮肉たっぷり。