ちくま評伝シリーズ〈ポルトレ〉ヘレン・ケラー: 行動する障害者、その波乱の人生 (ちくま評伝シリーズ“ポルトレ”)

「三重苦の克服した聖女」という従来のヘレン・ケラー像を一新する、21世紀のヘレン・ケラー評伝です。これまでの伝記では、戯曲「奇跡の人」同様に指文字が使えるようになった少女時代がメインでした。成人したヘレンは、その後どう生きたのでしょうか。ヘレンは障害は個人の問題でなく、原因が社会に起因していることに気づきます。ラドクリフ大学(現ハーバード大学)卒業後の社会運動家としての旺盛な活動が丁寧に書かれています。執筆は「筑摩書房編集部」となっていますが、筆者の情熱と労苦がしのばれる心のこもった一作です。新しいヘレン・ケラー像と出会える本です。また、山崎邦夫編著「年譜で読むヘレン・ケラー―ひとりのアメリカ女性の生涯」明石書店も、類書のないない労作です。どちらもお勧めします。